メニュー

強迫症(強迫性障害)

・新型コロナウイルス感染症流行により新規発症,病状増悪の患者が増えている.

・SSRIによる薬物療法,曝露反応妨害法を主体とする認知行動療法(CBT)を適切に実施する.

・治療法の選択において,神経発達症併存の有無など病態の詳細な把握が重要である.

・強迫症(OCD)は,繰り返し生じる思考(強迫観念)とそれを打ち消すための繰り返しの行動(強迫行為)を主たる症状とする疾患である.

・強迫観念や強迫行為はしばしば長時間に及び,慢性的に持続し,日常生活に大きな支障を生じる.

・OCDの生涯有病率は2%前後で,好発年齢は男性10歳代,女性は20~30歳代,患者の半数近くは経過中にうつ病を合併する.10歳代発症の男児ではチックや自閉スペクトラム症といった神経発達症の併存例が多い.

・OCDの症状内容は,「汚染恐怖と洗浄」,「加害不安と確認」,「対称性や正確性へのこだわり」,「性的・宗教的な思考へのとらわれ」など多様な亜型があり,複数の症状が併存することも多い.

・強迫観念か強迫行為,またはその両者が存在し,1日に1時間以上を症状に費やし生活機能障害を生じている場合OCDと診断する.身体疾患や器質疾患,ほかの精神疾患による二次的なものは除外する.

治療方針

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:selective serotonin reuptake inhibitor)を主体とした薬物療法,または認知行動療法(CBT:cognitive behavioral therapy)が推奨される.CBTとSSRIの併用療法,抗精神病薬による強化療法は特に難治例,重症例に対して推奨される.CBTの技法の1つである曝露反応妨害法(ERP:exposure and response prevention)は高い治療効果を示す.本治療は,強迫症状の対象となっていることがらへの段階的な曝露と反応妨害(例:あえて汚いと感じている物に触れ手を洗わない)を組み合わせて実施し,不安が自然に下がる体験を繰り返しながら強迫症状の軽減を目指すものである.

・強迫症状は本人の性格や意思とは関係のない,病気の症状である.本症状には,脳神経回路の過剰な活性化(OCDループ)が関係している.

・治療を継続的に行うことで症状は軽減する.

参考文献

1) 飯倉康郎, 他 : 強迫性障害治療のための身につける行動療法. 岩崎学術出版社, 2012
2) 中尾智博 : 強迫性障害の早期徴候と治療・対応. 水野雅文 編 : 重症化させないための精神疾患の診方と対応. pp161-170, 医学書院, 2014
3) 中尾智博 : 強迫症/強迫性障害. 三村 将 編 : DSM-5を読み解く 4 不安症群, 強迫症および関連症群, 心的外傷およびストレス因関連障害群, 解離症群, 身体症状症および関連症群. pp95-102, 中山書店, 2014
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME